人口減少社会での公的年金の役割は、「長生きしすぎること」への保険である
人口減少社会での公的年金の役割は、
「長生きしすぎること」への保険である
野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む
2010年6月19日 DIAMOND online
詳細は、リンクを参照して下さい。
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人口が減少する社会では、国庫負担が
あったとしても、賦課方式年金は個人年金に
収益率の点で追いつかないことを述べた。
では、人口減少社会では公的年金の役割は
ないのだろうか?
そんなことはない。人口減少社会において
も、公的年金には重要な役割がある。
それは、「長生きしすぎることに対する
保険」である。
私的年金は、本質的に有期年金とならざる
をえない。
終身年金をつくることもまったく不可能と
いうわけではないが、きわめて難しい。
これに対して強制加入の公的年金において
は、加入者数が十分多いため、実際の生存者
数は、生命表から計算される期待値とほぼ
一致する。
このため、終身年金を給付できるのである。
また、私的な長生き終身年金をつくろうと
すると、「逆選択」(adverse selection)
の問題にも直面する。
これは、保険金を受け取る可能性が強い
人が多く加入するため、保険が機能しなく
なるという問題である。
したがって、終身年金は、公的年金で
なければ実施できないことだ。
これこそが、公的年金の本来の役割なので
ある。
われわれは、改めてそのことを確認しな
ければならない。
・公的年金の必要性に関する間違った認識
公的年金の初期の段階(1970年代頃まで)
では、「人々は老後に備えて十分な蓄えを
せず浪費してしまう傾向があるから、国が
代わりに貯蓄する」ということが言われた。
これは、「貧しい社会における家父長的な
おせっかい」とも言いうるものだ
(実際には、積立金をつくることそのもの
が目的だったと考えられなくもない)。
ただし、この理屈は、賦課方式的要素が
増えるに従ってあまり言われなくなった。
この連載でも具体的な計数で示したように、
現在の年金は、支払いのために十分な積立金
を保有していない。
だから、こうした理由づけは、まったく
説得性のないものになってしまっている。
なお、全額税方式を主張する人は、公的
年金制度を公的扶助制度(生活保護制度)
と混同している。
老後における最低生活の保障は、公的年金
の役割とは考えられない。
積み立て方式を強調できなくなってから
言われたのは、「世代と世代の支え合い」
という理由である。
しかし、現実には、「支え合い」では
なく、後の世代が前の世代を一方的に支える
構造になっている。
「なぜこうした一方的な支えが必要なの
か」という疑問に対する答えは準備されて
いない。
「これまでの世代が享受してきたような
高水準の年金を、なぜ後の世代が支えなけれ
ばならないのか?」という疑問には、答え
ようとしても答えられないものだ。
また、これまで示したように将来年金制度
が財政破綻して、将来の年金が大きく削減
されるような事態になれば、世代間の不公平
はさらに拡大する。
こうした可能性を考えると、「世代と世代
の支え合い」という理屈を正当化するのは、
難しいと考えられる。
「国庫補助があるから有利だ」と言われる
こともある。
しかし、前回示したように、これはウソ
である。
人口が減少する社会では、賦課方式年金
は私的年金より不利になる。
賃金上昇率等の虚構をはげば、実態が
あらわになる。
だから、こうしたことを宣伝すべき
ではない。
公的年金とはその名が示すとおり「保険」
であり、私的年金とは違う機能を果たして
いるのだということを認識すべきだ。
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よく考えなければいけませんね。
何が真実で、どこに嘘が混じっているのか?
どうしていくのが良い方法なのか?
この記事は、良いヒントを与えてくれている
と思います。
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