共感の心で一緒に介護
2010/01/01 朝日新聞「ケアのかたち」より
---------------------------------------
鈴木さん、寺口さんは、2人とも独身。
すずの会とのかかわりを持つようになる
までは、相談相手もいなかった。
男性の介護は、引きこもりや虐待が起こり
やすい。
鈴木さんの父は認知症で、1997年に
亡くなった。
数年後、母が発症し徘徊がひどくなった
ころ、会社を退職。
お金がなく、介護サービスは週一度の
デイサービスと、月一度のショートスティ
に控えている。
働こうとしたが、もらえるアルバイト代は、
その間あずけるデイサービスの利用料金を
払うと、ほとんど消えてしまう計算だった。
24時間365日、排泄物をまき散らし、一日
中動き回る母から目が離せず、「毎日が夜勤
明け状態」だった。
その鈴木さんのもとに、すずの会のメンバー
が訪ねてきたのは2007年夏だった。
はた目にも「心配な親子」と見られて
いたからだ。
「認知症だから寄り添えとか言わないで、
こっちの心理状態をわかってくれた」と
鈴木さん。
近所でボランティアが開いている
ミニデイサービスに誘われ、参加してみると、
寺口さんがいた。介護を終えた高齢男性も
いて、愚痴を聞いてくれた。
寺口さんも2年前、家業の町工場をともに
支えていた父親を亡くし、半身麻痺の母親の
介護と仕事の両立の難しさから、工場を
たたんだ。
「すべてが犠牲になってんじゃないか」
挫折感と疎外感を味わっていたところに、
すずの会に誘われた。
ご近所を誘い自宅で開く食事会にも
誘われた。何回か参加した後、2人も自宅で
食事会を開いた。互いの家庭や介護の状態も
わかり、話せる相手が広がった。やがて、
すずの会の送迎ボランティアを頼まれ、
活動をまとめたDVD制作も頼まれ、気づくと
会の活動に「どっぷりはまっていた」と
2人は苦笑する。
寺口さんは言う。「利益追求の人間関係
とは違う、ご近所の世界を知った。
『ありがとね』『今日は天気良いね』
そんな会話ができる関係は心地いい。
一時は絶望していたけど、今はゼロに
戻って、自分に何ができるのかを探している」
要となっている代表の鈴木恵子さん(62)には
10年間の介護経験がある。86年の元旦、母が
くも膜下出血で倒れて寝たきりになった。
翌年は夫の母が脳梗塞から認知症に。
義父は90歳代。息子二人は小学生、夫は
単身赴任しており、家で母の介護をする
かたわら、徘徊する義母を追い、病院や
施設探しにも奔走した。
恵子さんを支えたのが、地域の保健師や
看護師、そして息子の小学校のPTA仲間
だった。「ケーキ焼いたからお茶しよう」
「みててあげるから父母会に行っていいよ」
緊急時に、「どうしよう」と言えば
「すぐ行くわ」と駆けつけてくれた。
介護を終えた95年、苦楽を共にした
PTA仲間5人で立ち上げたのが「すずの会」
困ったらいつでも鈴を鳴らしてください、
という意味だ。発足当初、地域で寝たきり
や認知症のお年寄りは120人ほどだったが、
人口約2万8千人の地区内に、今は千人ぐらい
が支援を必要としているとみられる。
ミニディなど定例会のあとは反省会が
あり、気になる人について話し合う。
すずの会の合い言葉は、
「やってみましょうよ」。
地域で、その人なりに、その人らしく
いられるように。支え合いの網の目は、
今日もきめ細やかに広がっていく。
---------------------------------------
「すずの会」素晴らしいです。
鈴木恵子さん応援します。
介護を終えて普通なら、やれやれ、
大変だったけど、やっと役目を果たせた。
で終わってしまうのに、それで終わらせず
「すずの会」を立ち上げた。
なかなか出来ないことです。
良い仲間達に恵まれたことも大きかった
ですね。
すずの会の合い言葉、
「やってみましょうよ」
そうです!
行動すること。まずやってみること。
分かっていても、なかなかできないことです。
介護保険制度も当然必要だけれど、
それだけでは不十分だと改めて
思わされました。
誰でも、こういう状況になりうる。
それなのに、何故か自分の問題だとは
思わない。他人事になってしまう。
何よりも大切なのは、地域の支え合い
なのですね。
地域で、その人なりに、その人らしく
いられるように。お互いに支え合こと。
そういう人間関係を作り上げること。
大切ですね。
自分に何ができるのか?
私も考えてみたい。
自分のおかれている状況から考えると、
残念だけれど、できることは少ないかも
知れないけれど、考えてみよう。
| 固定リンク
「学んだこと」カテゴリの記事
- 「今を生きるということ」(2016.07.28)
- 「ベストチョイス」にこだわらない(2016.06.25)
- そうだったのか!「いただきます」本当の意味(2012.11.21)
- 難病と診断された時、知っておくべき事:復習(2012.05.06)
- [災害時なぜ逃げ遅れる]心理に「あそび」 鈍る危機感(2011.06.29)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント