RNA干渉に必須の2本鎖RNAの合成酵素をヒトで初めて発見
RNA干渉に必須の2本鎖RNAの合成酵素を
ヒトで初めて発見
-ヒトのRNA干渉の機構解明に大きな一歩-
平成21年8月24日
科学技術振興機構(JST)
理化学研究所
詳細は、リンクをじっくり見てください。
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JST目的基礎研究事業の一環として、
国立がんセンター研究所の増富 健吉
プロジェクトリーダーは、RNA干渉注1)を
起こすのに必須である2本鎖RNAを合成する酵素が、
ヒトの細胞でも存在することを明らかにしました。
この発見は、ヒトなどのほ乳動物でのRNA干渉の
解明につながるものと期待されます。
RNA干渉は、2本鎖RNAが特定の遺伝子の発現を
抑制する現象で、ウイルス感染に対する防御機構
など生体内のさまざまな局面で重要な役割を
担っています。
1990年代に、植物で2本鎖RNAを合成する
酵素「RNA依存性RNAポリメラーゼ注2)」が
発見されて以来、真核生物などでも存在することが
報告されていましたが、ヒトなどのほ乳動物での
存在は確かではなく、分子生物学における長年の
謎のひとつとなっていました。
今回、段階的な実験を重ねた結果、
ヒトのテロメア注3)を合成する酵素として
知られていたテロメレース逆転写酵素
(TERT)注3)が、RNA依存性RNAポリメラーゼ
としての機能も持ち合わせており、実際に
細胞内で機能していることを突き止めました。
この発見は、RNA干渉のメカニズムの重要な
部分を解明したもので、開発が進むRNA干渉
応用医薬品、新規がん治療法の開発などの
発展にも寄与するものと期待されます。
本研究成果は、国立がんセンター研究所の
増富 健吉 プロジェクトリーダーを中心とした、
理化学研究所 オミックス基盤研究領域の林崎 良英
領域長、ハーバード大学のウィリアム・ハーン
教授らとの共同研究によって得られたもので、
2009年8月23日(英国時間)に英国科学雑誌
「Nature」のオンライン速報版で公開されます。
<研究の内容>
TERTはRMRP(RNA component of mitochondrial
RNA processing endoribonuclease)という
非たんぱくコードRNA注4)と結合した際に
RNA依存性RNAポリメラーゼの活性を示すことを
突き止めました(図2)。
さらに、TERTのRNA依存性RNAポリメラーゼ活性
によりRMRPの反対鎖が合成され、2本鎖RNAが
作られた後、確かに22塩基の小さな2本鎖
RNAとして機能していることも証明しました(図3)。
これら一連の結果は、試験管内でヒトRNA依存性
RNAポリメラーゼの人為的な再構成が可能で
あったこと、またヒト由来の培養細胞を用いた
実験で、細胞内でも通常状態で起こると
確認できたことから、ヒトでもTERTがRNA依存性
RNAポリメラーゼとして働きうることが示唆されました。
今回の発見は、
1.ヒトなどのほ乳動物でもRNA干渉に重要な
酵素であるRNA依存性RNAポリメラーゼの存在が
示されたこと、
2.ヒトなどのほ乳動物においても、RNA干渉の
過程で重要な役割を果たす22塩基の小さな
2本鎖RNAが、外部から導入されなくても
細胞内で作り出されていることを示した
最初の報告です。
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<今後の展開>
>RNA依存性RNAポリメラーゼの存在が立証された
>ことから、生体内に存在するヒト型RNA依存性
>RNAポリメラーゼを用いてのRNA干渉増幅技術や
>開発が進むRNA干渉応用医薬品の新たな技術への
>応用が期待されます。
とのことです。
なかなか難しい内容なので、わかりやすく
説明できないのが残念ですが、
RNA干渉という現象の発見には、ノーベル医学
生理学賞が授与されるほどの重要なもの。
その「RNA干渉のメカニズムの重要な部分を解明
したもの」
とのことなので今後の発展が期待出来そうです。
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