花粉症も地球温暖化も「ムダな抵抗はしない」が正しい
花粉症も地球温暖化も「ムダな抵抗はしない」
が正しい
動的平衡で考える生物学~
福岡伸一・青山学院大学教授(後編)
2009年8月20日(木)日経ビジネスONLINE
詳細は、リンクを見てください。
こういう考え方もあるのですね。
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福岡:花粉症を例にあげますと、花粉が侵入した
ときに出るヒスタミンという情報伝達物質を遮断すれば、
鼻水やくしゃみは軽減できます。
これは生命の流れを止めて見たときに得られる
因果関係の思考です。
そこで作られたのが抗ヒスタミン剤です。
服用すると薬の成分が先回りしてヒスタミン
レセプターをブロックします。
花粉が来たときにヒスタミンが出ても、
ヒスタミンレセプターにくっつけない。
だから抗ヒスタミン剤を飲めば、花粉症の
諸症状は緩和されます。
ただし、その効果は“その場に限って和らぐ”
というものです。
問題は、生命は動的平衡であるため、それでは
済まないということです。
人の身体は、ヒスタミンを出しても受け取る
細胞が反応しないからもっとヒスタミンを出す。
一方、受け手の細胞もより多くのヒスタミン
レセプターをつくるようになる。
つまり、抗ヒスタミン剤を飲み続けると、
より過激な花粉症になるというわけです。
――短期的に効果があればあるほど、リアクション
も大きいわけですね。
福岡:自然現象や生体や生命は機械論的な
ものではありません。
ある現象にピンポイントで介入すると、
その場で効果をもたらしはします。
でも、介入し続けると逆の方向に生命のしくみが
動き出してしまいます。
局所で効率を上げると得をした気分になる
かもしれません。
しかしその結果が、全体に悪い影響を及ぼす
こともあります。
機械論的な観点は物事の本質的な解決に
かならずしもつながりません。
――では、動的平衡の考えでは、例えば花粉症に対し、
どういう答えを用意しているのでしょうか?
福岡:「騙しだまし付き合うしかない」
ということになりますね。
動的平衡は明確な回答を与えません。
じたばたしても駄目だと教えてくれます。
人間が流れを止めて、因果関係のパターンを
抽出するのは、脳の癖ですからしかたない。
ただ、「癖を通じてしか物事を見ることができない」
ことを知った上で見るのと、そうでないのでは
物事の見え方は違います。
相対化できるところが人間の能力だと思います。
環境問題は、流れを止めないという観点に立つと
シンプルに見えてきます。
インプットを減らすか、アウトプットを増やすしかない。
福岡:インプットを減らすには、できるだけ
化石燃料を燃やさず、代替エネルギーを求めて使う。
アウトプットを増やすには、光合成を応援する
しかありません。
木を植えることもひとつですが、海洋中の微生物が
二酸化炭素を有機物に変える作用もあるので、
海洋の保全を考えることも大切です。
福岡:地球工学の発想から、二酸化炭素を
集めて地中に埋めようとか、温暖化を抑えるため
大気中に反射微粒子を撒いて太陽光線を遮ろう
という試みが提案されています。
こうしたピンポイントの工学は、動的平衡にとって
よくないことが多い。
一時はうまくいっても、間もなく別のリベンジを
受ける可能性があると思います。
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私には、こういうマクロに捉えるとらえ方が正しい
ように思えます。
対処療法は、時間制限のある中では、必要だと
思いますが、本質的な解決にはなりません。
>人間が流れを止めて、因果関係のパターンを
>抽出するのは、脳の癖ですからしかたない。
>ただ、「癖を通じてしか物事を見ることができない」
>ことを知った上で見るのと、そうでないのでは
>物事の見え方は違います。
>相対化できるところが人間の能力だと思います。
同感です。全てが関係しあっています。
その一部を切り出して判定するのは間違いです。
一部しか見ていないことを認識すべきです。
生物多様性もそうです。
多様であることが、安定なシステムの条件で
あるのかも知れません。
いったん多様性を崩すと、元にもどすのは、
不可能に近い。取り返しがつきません。
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