裁判員制度について(その2)
2009/5/24に裁判員制度について投稿しました。
その際、問題点について、幾つかあげましたが、
その続きになります。
2009/7/1の朝日新聞に映画監督の周防正行さんと
弁護士の今村核さんとの対話が載っていました。
周防さんは、痴漢冤罪事件を扱った「それでも僕はやってない」
という映画を作成された監督さんです。
そして、映画の中に登場する冤罪と戦う弁護士のモデルと
いわれる人が今村さんです。
その二人の対談の中に、知っておいた方が良い話がありました
ので投稿しておきます。頭に入れておくと良いと思います。
1.今回の裁判員制度の法律条文です
>裁判員法1条にその目的として、
>「司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資する」と
>そして、制度設計者の裁判官は、注釈書で「現在の刑事裁判が
>基本的にきちんと機能しているという評価を前提として」
>「裁判の正当性に対する国の信頼を高めることを目的とする」
>と書いてあるそうです。
>「自分達はちゃんとやっている。それは参加してもらえばわかる」
>と言ってるわけです。
何か抜けていると思いませんか?
条文からは、裁判所に今までの反省が見られません。
>司法制度改革審議会の段階では、「裁判内容に国民の社会的
>常識を反映させる」と言っていましたが、法律になる段位で
>なぜか抜け落ちています。
>「健全な社会常識を反映させることにより裁判の適正化をはかる」
>という言葉を入れるべきです。
同感です。
目的をはっきりさせなければ国民を参加させる意味を失います。
>職業裁判官による裁判がちゃんと機能しているのなら、
>なんで素人の自分達がかかわらければいけないんだ、
>というのが多くの人の素直な思いです。
>職業裁判官であるがゆえに間違えてきてしまったことも
>あるんだ、と。そういう共通認識がないと、意味が
>わからなくなる。
2.公判前整理手続きについて
>弁護士は、予定する主張を示さないと、それに関連する
>検察官手持ちの証拠の開示をうけられないという不利益を
>受けることになっています。
さらに、「裁判員に過大な負荷はかけられない」というキーワード
のもとに、
>審理期間は出来る限り短くする。3日間とかに。その為証拠の
>量は全体として減らさないといけないので、重複する証拠や
>無駄な争点を省くと言います。
>この制度では、「やむを得ない事由」がない限り、公判前整理手続き
>後に新たな証拠の請求はできません。
問題を感じます。
本末転倒ではないでしょうか? 裁判員の都合をそれほど過大に
評価する必要があるのでしょうか?
正しい裁判をするための制度ではないのでしょうか?
あらかじめひいた線路の上を進んで行くだけのやり方が
果たして、正しい結論を導けるのでしょうか?
はなはだ疑問です。
3.裁判官と裁判員の情報量の差について
>裁判官は公判前整理手続きの中で、双方の主張や証拠の全体像を
>把握して、ある程度心証を形成した上で公判に臨むのに対して、
>裁判員は、何も知らずにまっさらの状態で出てくるわけです。
>裁判員が知りうるのは、整理されて、絞り込まれた証拠だけ。
>公判に参加した時点で、裁判官と裁判員の間に圧倒的な情報格差が
>存在している。
これで良いのでしょうか?
仕方がないのでしょうか?
>裁判員に選ばれた以上はちゃんとやりたい、と思うのが普通でしょうね。
>それがどのレべルでちゃんとできるかと考えると。はなはだ心もとない。
>見られない証拠がたくさんあるというのは裁判員にとって
>不安だと思います。
>最後の供述調書だけを証拠調べ請求してくる。
>途中経過が見えないで。正しい裁判ができるでしょうか?
途中経過なしで、いきなり結論だけを正しいかどうか判断せよと、
言われても、無理があるのでは?
4.裁判員の守秘義務について
>裁判員の守秘義務も問題です。感想なら述べても良いと
>言っていますが。取り締まる側が恣意的に判断できるわけです。
>怖くて何も言えません。
>3年後に制度を見直すことになっていますが、裁判員経験者の
>意見を聞かずにどうやって見直すのか疑問です。
>評議で裁判官がある方向に議論を誘導しかたどうかといったことの
>検証は、守秘義務を解除しないとできません。3年後に見直すためにも、
>今すぐ守秘義務規定は見直すべきです。
同感です。
4.裁判員制度を実施するにあたって
>職業裁判官制度の下で冤罪事件が多く起きました。有罪率99.9%
>の閉塞状況が、市民の参加で変わるのではないかと期待します。
>裁判員には、「検察官が有罪に必要な『合理的な疑いを超えた証明』
>をしたかどうかを裁く」ことが役割と考えて臨んで欲しいと思います。
もし、私がその立場にたったら、そうしようと思います。
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