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2007年5月 1日 (火)

あえて国税庁に言いたい

あえて国税庁に言いたい、「e-Tax」の使い勝手向上を望む
2007年3月1日 木曜日 奥井 規晶

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奥井 規晶(おくい・のりあき)

1984年、早稲田大学理工学部大学院修士課程終了後、
日本IBMに入社。システムエンジニアとして活躍後、
ボストン・コンサルティング・グループを経て、
アーサー・D・リトル(ジャパン)ディレクター、
シークエンシャル代表取締役、ベリングポイント代表取締役
などを歴任。2004年4月に独立。
現在、インターフュージョンコンサルティング会長。
早稲田大学大学院客員教授を経て、事業戦略、営業戦略、
組織改革などのコンサルティング、ラジオのコメンテーター、
講演、執筆などで幅広く活躍。
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奥井 規晶氏の記事を転載します。

 こんなことで良いのでしょうか?
 私も会社は自己都合により、退職したので、
確定申告をしています が、「e-Tax」は使用しませんでした。
 以下のようなものだと すると、使用したくありません。
結果、以下のようになるでしょう!

>こんな状況が続けば、
>どんどん日本はIT分野の後進国になっていく。
>私はそれが不安でならない。

 私も不安でたまらない。
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 今年もまた確定申告の時期が来た。
 執筆や大学での講義など自分の会社以外からの収入がある私は
所得税の確定申告が必要で、毎年この時期になると憂鬱になる。

 実は昨年からこの憂鬱を解決すべく
「e-Tax(国税電子申告・納税システム)」の利用に
チャレンジしてきた。
 国税庁のキャンペーンで、とても簡単に確定申告ができると
宣伝していたし、IT(技術革新)業界に深く関わっている
私としては、当然これくらいはできるだろうと思っていたからだ。
 昨年は利用率がせいぜい0.5%程度しかなかったことは、
もちろん知っている。だからこそ、業界人として先乗りしたかった
のだ。

 しかし、昨年は大失敗だった。
e-Tax利用を申請してソフトを入手したまではよかったのだが、
あまりの忙しさに2月が過ぎてしまい、3月になって初めて届いた
CD-ROMを開封した。
 説明をよく読むと、利用する前に初期暗証番号を変更する必要が
あり、その期限は2月○×日だった。気がついた時は既に3月。
いくら変更処理を試みても、受け付けてくれない。
 結局、国税庁のホームページの「確定申告書等作成コーナー」で
書類を作成し、自宅で印刷して、源泉徴収票などの必要書類を
糊付けして税務署に届けた。


・所得税の確定申告に必要なのはどの書類?

 今年の2月も例年にない忙しさなのだが、去年の失敗を踏まえて
早めにe-Taxソフトを起動してみた。
 ちょうどバレンタインデーだ。
 しかし、今年は初期暗証番号の変更期限が「1月末まで」となっているではないか。
こんな大事なことは、もっと大々的に宣伝してもらいたいものだ。
 確かに送られた資料の中に小さく書いてあるのだが、
いやいや確定申告をしている大半の国民が、事前に十分な時間をかけて準備しているとは思えない。

 しかし、ものは試しと暗証番号を変更してみた。
 そうしたら何と今年は期限を過ぎても初期暗証番号の変更が
受け付けられた。ほっとしたのだが、それならそうとちゃんと
知らせてほしい。

 そもそも確定申告時期の前に初期暗証番号を
変更しなければならない理由が分からない。
 申告時に同時にやればよいではないか。

 まぁ、そんな不満を持ちつつも、私はいよいよ申告書作成の
機能にチャレンジした。

 昨年利用した国税庁の確定申告書作成コーナーはかなり
よくできていて、必要な項目を入力すると、
自動的に控除額等を計算してくれた。
 私はそのイメージを持っていたのでこのe-Taxソフトでも
最低限の入力で自動作成してくれるものとばかり思っていた。

 ところがこの申告書作成機能が不親切極まりない。
 まず、大量にある申請書類の中から、所得税の確定申告に
どの書類が必要かを簡単に教えてくれる機能がない。
 私は昨年の書類のコピーを棚から探し出して何とかこれとこれだと
分かったが、それでも作成しているうちに、
あれもこれもと必要そうな書類が出てくる。

 しかも、申告書に必要な情報を入力する際に、
わざわざ控除額なども自分で計算する必要がある。
 これでは確定申告書作成コーナーの方がはるかにましだ。
 結局、私は昨年同様確定申告書作成コーナーで書類を作成し、
e-Taxで同じものを打ち込んだ。
 全くの二度手間だが、この方が絶対確実だからだ。
 ここまでで既に半日が過ぎていた。今年の2月は例年になく忙しく、業務上まことに手痛い。


・会社を半休して住民基本台帳カードを申請

 何とか書類を作成して送信しようとしたら、
今度は電子署名が必要なことに気がついた。
 どこかのホームページに所得税の申告は電子署名が
必要なくなったとあったので、いらないと思い込んでいたのだが、
それは税理士に依頼する場合だけだったのだ。

 自分で申告するにはやはり電子署名がいる。
 そのためには役所に行って住民基本台帳カードを取得し、
それに公的証明書サービスの電子署名をもらう必要がある。
 これは大変なミスだった。

 しかし、今年はぜひともe-Taxをしようと心に誓っていたので、
会社を半休して区役所に出かけ、住民基本台帳カードを申請した。
 申請から入手まで1週間ほどかかる。
 しかも、カードを取りに行くのは本人が行かなければならない。
 おまけに事前にICカードリーダーを購入しておく必要がある。
 たまたま私はEdyカードのユーザーで、PCで電子マネーを入手していたので、ソニー製の「パソリ」というICカードリーダーを持って
いる。
 そこで1週間後、また半休を取り届いた葉書と免許証を持って
区役所に行った。カード入手で500円、公的認証サービスで500円、
合計1000円かかった。

 問題はICカードリーダーである。役所の担当者が言うには、
e-Taxで使えるカードリーダーは、書類に記載されているものだけだという。
 そこには私が持っている「パソリ」はなかった。
 どうしたらいいかと聞くと、「秋葉原あたりで売っていますよ」
と言う。
 わざわざ秋葉原まで買いに行かなくてはならないのかと怒りつつ、
近所の量販店に行ってみた。
 そこではPC関連機器は売ってはいたが、ICカードリーダーは売っていない。

 もう、ここまで来たらあきらめるわけにはいかないと、
秋葉原まで買いに行った。最近駅前にできた日本最大級の量販店に
行ってICカードリーダーの売り場を探したが、見つからない。
 店員に聞いて教えてもらったら、広大な店内のほんの一角に
横幅1メートルぐらいの売り場があり、たった3種類だけ売っていた。
 私はその中で「公的認証サービス対応」と書いてある機種を
買った。
 もちろん役所からもらった対応機種リストを確認したうえでの
ことだ。
 値段は約3000円かかった、もちろんそのほかに秋葉原まで往復する
交通費もかかっている。住民基本台帳カードと電子署名、
そしてICカードリーダー購入で半休をすべて費やし、
昼飯を食べる時間すらなかった。

 実際もうかなり嫌気が差していたのだが、ここまで来たら
e-Taxとの格闘も最終段階だと自分を励まし、最後の締めに
かかった。
 PCを立ち上げ、ICカードリーダーのデバイスドライバーを
付属のCD-ROMからインストールした。
 次に区役所からもらった公的個人認証サービスのCD-ROMから
必要なソフトをインストールして、いよいよ準備は整った。
 e-Taxのソフトを立ち上げて、必要な書類に電子署名を施し、
送信処理をした。これらの作業は約1時間で済んだ。

 結局、私がe-Taxによる確定申告を終えるために費やした時間は、
書類作成に半日、ICカード取得のために丸1日強。かかった費用は、4000円プラス交通費。


・このままでは日本がIT後進国に

I T業界に深く携わる私としては、今回のe-Taxとの奮闘劇で、
つくづく思い知ったことがある。それは日本のIT業界の根本にある
「個人ユーザー軽視」の悪習だ。

I T業界、特にソフトウエア開発の仕事は、個人向けPCソフトの
開発以外は、基本的には「B to B」が主流だ。
 企業から仕事を受注し、その企業が求める仕様に沿って
ソフトウエアを開発する。
 従って商売としては、その企業の担当者が求める機能要件を
満たして品質の良いソフトウエアを納入すれば十分に成立する。

 最終ユーザーである個人の使い勝手を追求すると
ソフト開発量がどんどん膨らみ、発注する企業にとっては
さらなる負担を強いられることになる。
 今回のe-Taxもソフトとして必要な機能は十分に揃っているの
だろう。
 しかし個人が使うにはあまりにも使い勝手が悪い。

 しかも、事前に必要な事項(初期暗証番号の事前変更、
電子署明の入手、特定のICカードリーダーの購入など)
をユーザーに周知徹底していない。

 これはIT業界の問題というよりは国税庁の問題で、
あまりに事前の負担を強調すれば国民が使ってくれない
と思ったのか、あるいはあまりにサービス精神に欠けた
お役所仕事の結果と言わざるを得ない。
 もしくは、使い勝手のよいソフトにするための予算が
足りなかったのかもしれない。

 しかし、本来、IT業界が成熟した産業となるためには、
自分たちが作り上げたソフトがどのように使われるかまで、
きっちりと視野に入れるべきだ。
 ITが社会的なインフラとなりつつある現在、そこまで発注者
(この場合、国税庁)に提案し、実現させるのがIT事業者の
責務ではないだろうか。
こんな状況が続けば、
どんどん日本はIT分野の後進国になっていく。

 私はそれが不安でならない。

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